そして家族に その10

私は50歳を機に、突然「大人から始めるピアノ教室」に通い始めました。小さい頃、バイエルの下巻までも続かなかったので、ほぼ弾けないのと同じでしたが、譜読みをつけた楽譜で、毎日コツコツと練習をしていました。土日の休日は、ソファーでくつろぐ夫が、子供が弾けるようになっていく過程を楽しむがごとくに私のピアノを聴いて応援するようになり、時に褒めちぎり、時に歌い、時に拍手してくれるのですが、私としては、ものすごく気が散って仕方がありませんでした。今から考えてみると、あんなにたどたどしく聴くに耐えないピアノをよくも毎週末聴いてくれたものだと本当に感謝しています。幸いにして、３年くらいしたらピアノの先生が遠くにお引越されてしまったので、止める大義名分が出来、私も夫も、悪魔のようなピアノの旋律から解放されたのでした。