今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

大物政治家の奥様

今回、ずっとブログをお休みしていましたので、どうせなら時を戻そうと思い、私の若かりし頃の話をイラスト混じえて書いていこうかと思います。

 

以前、ブログにも書きましたが、私はとあるデザイン会社に就職し、忙しい日々を送っていました。メインは企画のお仕事だったのですが、なぜか週末になると製作に身売りされ、プレゼン前のデザイン作業のお手伝いをやらされていました。月に一度でも土日にそれをやると、代休のない会社でしたので、2週間ぶっ通しで働くことになりました。若さ故、そんな生活もそれほど意に介さず、仕事アフターは真夜中に飲みに行ったりもして、万年睡眠不足と不規則な生活が続いていたあるとき、私の身体に少しずつ異変が起きていました。見た目には全く症状がないので健康そのものでしたが、実は生理がずっと止まらなくなっていたのです。当時は今のようにググって病気を調べるという時代ではなかったので、たいしたことはないと勝手に思い込み病院にも行かず働き続けていましたが、さすがに1ヶ月半もその状態が長く続くと、貧血気味にはなるし、プチ鬱にもなっていました。

そんな時よく聴いていたのが、エリック・サティの「ジムノペディ」。家族でクルマに乗っていたある日、ラジオのFMからその曲が流れたので「あ、この曲、今、私が一番よく聴いている曲だわ」と両親に言うと、番組の最後に「今日は現代の心の病に効くとされている曲をお送りいたしました」とナレーションが入り、父が「お前、病んでるのか?」と聞いてきたのでした。

そのことがきっかけで、私自身も日常生活を少し改めるべく、仕事から離れて楽しいことを考えようと夏休みケニア旅行を思いついたのでした。そして、長年ずっと憧れていた「動物写真家 平岩道夫先生と行くケニア旅行」に申し込んだのでした。

当時働いていたデザイン会社は非常に進歩的で、夏休みはお盆時期に会社全体で2週間とれるということでしたので、私は大胆にもお盆を挟んだその時期を予測してケニア旅行を申し込んだのでしたが、運悪く、旅行前の2週間が会社の夏休み期間となってしまったのです。2週間の夏休み後にさらに2週間休みをとって旅行に行くとなると、都合4週間も出社しないということになります。ものすごく悩み抜いた末、私はなんとケニア旅行を優先する決断をし、会社に思い切って退職願いを出したのでした。

 

ケニア旅行を楽しみに、それだけを支えに毎日仕事をしていた私でしたが、運命のいたずらか、それまで平和だったケニアで、その年の夏に限ってクーデターが起き、ナイロビ市内の高級ホテルで観光客が射殺され、旅行代理店がケニア旅行を中止してしまったのでした。会社まで辞めてケニア旅行を準備していた私にとって、それは大ショックでした。会社には詳しいいきさつを話していなかったし、円満退社し送別会までやっていただいたのに、今更戻るわけにもいかず、しかたがないのでアルバイトを探していたその時、母の親友のご主人が大物政治家の主治医をしていたので、その流れで奥様が自宅で事務的なお手伝いを捜しているとのことから、身元が確かな私にやってみないかとお声かけいただいたのでした。

 

その大物政治家のご自宅は、都心の一等地にある超高級高層マンションでした。今でこそタワーマンションは都内のそこかしこに林立していますが、おそらく高層マンションの先駆けだったのではないでしょうか。エントランスを入ると、住居マンションだというのにホテルのように制服を来た受付の女性が常駐していました。

マンションのエレベーターを上がると、ドアのピンポンはなく開け放たれた状態になっており、声をかけると「は〜い」と関西のイントネーションで現れた奥様は、お手伝いさんと見紛うほど超普段着の普通のおばさんでした。

奥様は、気取りなく明るくてケタケタとよく笑い、関西弁で面白おかしく会話するとても気さくな方で、私が想像していたのとは真逆でした。本題に入ると「いつから来れます?」と明日からでも来て欲しいということになりました。履歴書を見せることもなく、ただ普通の世間話をしただけの面接でしたが、最後に奥様が「あなたのその鈴虫のような声で電話に出てくれたら嬉しいわあ〜」と、またケタケタと笑ったのでした。

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