今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

悲劇は浴室で起こった

私が大物政治家のご自宅で、奥様のお手伝いをさせていただき、しばらくたったある日、連日遅くまで居残りしている若い娘を夜遅くに帰宅させるより、住み込ませた方がいいと考えたようで、私は家に帰れなくなりました。

それって住み込みのお手伝いさんじゃないですか!ガーン( ̄◇ ̄;)

しかし、当時の私は奥様の無理難題にいつもいやとは断れず、通いから住み込みになってしまいました。それというのも、家政婦さんがすぐにやめてしまうからです(シクシク・・・)

「朝は先生は5時半に起きるけれど、あんたは6時半でええわ」と奥様の優しい言葉。いや、優しくなんかない!夜遅くまで働かされているのだから!

 

そうそう、しかもですよ、夜は、先生、奥様と入った残り湯のお風呂に入れというのです。当時、ホテルのような洋バスのお風呂には蓋がありませんでした。それで、結婚式等の折り詰めに使われていた白い水玉柄のビニールの風呂敷を2枚、浴槽のお湯に空気が入らないようにベターと貼って蓋代わりにするというのを、奥様が考案したのでした。「ビニールの風呂敷をお風呂の蓋代わりに」とお得意の笑顔で私に伝授。

しかし、先生が入ってから奥様がそのように蓋をしても、夜の仕事全部完了して私が入る番の時には、すっかりと冷めてました(涙)というか、他の部屋にあるお風呂を使わせてくれーと言いたかったけれど、奥様は無駄が大嫌いだから、そんなことを許すはずがありません。

湯面に貼りついたビニールをはがして、タオルかけのところにそれをぶる下げ、お風呂につかるのですが、びっくりするほどぬるいお風呂でした。長者番付けにものっているくらいの大物政治家のご自宅なのに、庶民にも劣るドケチっぷりの生活でした(シクシク・・・)

 

そんなある日、奥様は病院に検査入院するとおっしゃり、私はなんと一切の家事をまかされてしまいました。

まあ、日中は先生はいらっしゃらないので良いのですが、これから帰宅するという秘書からのお電話が入ってからが大変。

 

当時先生のご自宅で飼っていたワンちゃんは昼間ほとんど眠って過ごしていたのですが、先生のおクルマがマンション近くまで来て運転手さんがクラクションを1回鳴らすと、それを合図にムクっと起き上がり玄関に移動してワンワンと吠え始めます。私はその鳴き声を聞いて、台所の食器棚引き出しから煮干しを取り出し玄関で待機。

エレベーターを降りられ、ワンちゃんが嬉しくお迎えするので、先生に煮干しをお渡しすると、先生はすかさずそれをワンちゃんにあげるというお迎え行事があります。猫じゃなく犬なのに煮干しなのか?と思いましたが、継続して続けられているルーティーンのお迎え行事に口出しはできません。

 

ご帰宅すると先生はお着替え前にお風呂に入られるので、私はすぐに浴室に行きお風呂にお湯を溜めます。今のようにボタン一つで自動でお湯が入るような仕組みはなかったので、カランで湯加減を調節しつつお湯を出し、頃合いを見計らって止めます。

 

そして、リビングのデスクの上にある郵便物をチェックされている先生に「お風呂の準備ができてますので、いつでもどうぞ」とお声をかけるわけです。無口な先生は「ん」と一言。

私は今一度湯加減を見ておこうと浴室に行くと、なんと、その日に限って、浴槽の栓に隙間があいていたのか、一度溜まっていたはずのお湯がなんとすっかり抜けていて、空っぽになっていたのでした。

 

さらに運が悪いことには、お召し物をすべて脱いだ先生が前を隠しながら浴室に向かって来ていたのでした。ギョエー!

私はほぼ悲鳴に近い状態の大声で、「すみません!お風呂の栓が抜けてました!今しばらくお待ちを!」と叫ぶと、先生は「あ、そう」と一言、クルっと後ろに向きを変えてお部屋に戻られたのでした。韓流時代劇ドラマだったら、打ち首ものの大失敗だというのに、私のことを怒鳴ったり、咎めたりすることもなく素っ裸で立ち去る先生。ああ・・・先生のお背中とお尻のお優しいこと!

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その後は、夕飯でまた大失敗。

私はビタクラフトなどという高級ステンレス鍋を扱ったことがなかったのに、私の得意料理のひとつのゆで豚を先生に作ってさしあげようとしたのですが、火通りが私の予想をはるかに越えていたため、私が鍋のふたを開け、ゆで豚を取り出し、タコ糸をほどこうとしたら、悲しいことにお肉の塊がホロホロに崩れてしまったのでした。形を失いグチャグチャになってしまったお肉をどうしたものかしばらく悩んでましたが、先生は鰻が大好物だったことを思い出し、その柔らかいお肉をいっそ甘辛いタレで味付けしてお出ししようと腹をくくりました。

深めの大きなお丼に、ゆでたほうれん草を敷き、その上に柔らかく形を失った豚のお肉をこんもりとのせて、その上から甘辛いタレをいっぱいかけました。

先生が召し上がるのをドキドキしながら、そばで見ていた私。

すると、無口で滅多に私などにお声をかけない先生が

「これ、あんたが作ったの?美味しいよ」

とおっしゃったのです。

いや〜、お風呂の失敗の上に、お食事の失敗では、もう立つ瀬がないと自信喪失していたのですが、どうやら名誉挽回できたようで、ホッと一安心。全く、奥様、あれもこれもやらせて、本当に人使いが荒いと思ったのでした。

しかし、プロの家政婦でもすぐに辞めてしまうというのに、私も意外と根性あったみたいです。