そして家族に その22

ひとって、どうでもいいようなことでも、密かに楽しみにしてやっていることがあったりしますよね。今回は私の500円玉貯金の話です。以前１円玉貯金を大きなウイスキーの角瓶に貯め、その重たい瓶を銀行に持ち込み両替を頼んだことがありました。愚かな私は意気揚々と「これ、お札に換えて下さい！」と言ったんですけれども、銀行の窓口の女性が、申し訳なさそうに、

「お客様、937円でしたので、お札にはなりませんでした」

と言いました。その時、恥ずかしさと、やり場のないガッカリ感に襲われたのですが

「でも、お客様、考えようによっては937枚もあったんですよ。すごいですよね」

と慰められたました。しかし、私は硬貨の量と貨幣価値のアンバランスにかなりショックを受けたのでした。

ある時、100円ショップで、500円玉貯金箱というのを見つけました。こんな小さなケースなのにいっぱいになると25000円にもなるんだ！って知った時、私の「やる気スイッチ」が入りました。それからというもの、お釣りで500円玉をもらうと、なるべくそのケースに入れるようにして貯金を始めました。枚数を数えては、おお１万円まで貯まったと密かに喜んで、せっせと貯金を楽しんでいました。

何ヶ月かしてその箱がやっと一杯になった時、すごく嬉しくて家族にそのケースに収められた貯金の額を自慢して見せました。しかし、間もなく、あっちの空気は読めるけど、こっちの空気は読めない息子に、その貯金箱の硬貨を一気に持っていかれてしまったのでした。