今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

忌憚のない意見

忌憚のない意見

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企業イメージをつくる、平たく言えば、会社の個性をつくる、というのが、再就職した会社の仕事でした。そのためには、まず依頼を受けた企業がどういう会社なのか、という情報収集をしなくてはなりません。若手、中間管理職、役員、トップと各階層のひとに、オフレコということで忌憚のない意見を聞き出すヒアリングというものをやりました。ある時、若手社員ヒアリングということで、クライアントから選ばれた4人が会社にやって来ました。会議室に通してしばらくお待ち頂いていた時、部屋にはおとなしく存在を消していた私しかいなかったため、若い社員達は、すっかりとくつろいでしまって、昨晩遊びに出かけた先での下世話な話題を始めました。


「こいつ、昨日、○○(山手線の駅名)で遊んで来たらしいぜ。」
と言い出しました。
そしたら、次々と○○の話で大盛り上がりして、挙げ句の果てには、
「○○って、あの駅に降りるだけで、やばいよな〜。あそこで下りる女は、絶対にアレだぞ。」と言うと、皆で大笑いしました。

実は、何を隠そう、○○は私の家の最寄り駅でした。ということで、私が、こんな者達の話を黙って見逃すわけはありません。まずは、コホンと一発咳払いをしてから、
「すみません。○○って、私の最寄り駅なんで、毎日○○で下りているんですけど…」
と可愛い声で、しかし毅然とした態度で言った途端、4人の顔色がサッと変わり、凍り付くというのはああいう状態のことを言うのだと思いました。それまではしゃいでいた4人はもはや一言も話さなくなり、やがて、ヒアリングが開始されたのですが、どうにもこうにも皆しゃべり出しません。
「どうぞ、何でも忌憚のない意見を言ってください。今日のここでの話は一切オフレコで、私どもの内部から御社にもれることはありませんから大丈夫です。」
すっかりと萎縮してしまった彼らの口は重たく、ヒアリングが終わってから「今日の若手は皆あんまりしゃべらなかったな〜」と社長が感想をもらしたので、「そうですね。皆さん無口でしたね〜」と私はこたえました。