今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

先生のおクルマに乗る

別荘でお客様をお見送りしたら、突然先生の「帰るぞ」の一声。

まだお食事の後片付けが手付かずだったので、私は大慌てで食器を洗おうとしていたら、奥様が「何やってんの、このまんまでいいのよ。あとは片付けてもらえるから、早くクルマに乗りなさい」

クルマって?先生の??

そう、私と奥様は行きはハイヤーで別荘まで来たのでした。ハイヤーを手配してないし、もしかして、先生のおクルマのこと?

先生はとにかく、ものすごいせっかちなので、もうクルマに乗り込んでしまわれたのでした。私は取るものも取り敢えず大急ぎで荷物をつかみ、そのまんまの状態、つまりエプロン姿で玄関に飛び出しました。

すると、よくVIPが乗るような高級大型黒塗りベンツが駐車しており、中を見ると助手席に先生が椅子を思いっきり後ろに引き、足を伸ばしてお座りになっていました。

そして奥様はというと、左ハンドルの運転手さんの真後ろに座られているので、え?え?私って、先生の真後ろの席なんですか?この場所って、一般的には、要人のお席なのでは?と戸惑っていると、

「早くそっちから乗りなさい!」と奥様が急かすので、恐る恐る奥様の隣、先生の真後ろの席に乗り込みました。

私が乗ると、クルマはすぐに出発。

別荘の管理人の奥さんがニコニコと手を振ってお見送りしてくださり、奥様は「あとはよろしくお願いしますね」と手をあげてご挨拶。私は台所やリビングを後片付けできないまま出発することに、ただただ申し訳なく何度も頭を下げたのでした。

走り出すと、先生はお疲れになったのか、すぐさまおやすみになられ、車内はラジオをつけるわけもなく、私語もないので全くの無音状態。本当なら最高の乗り心地の高級ベンツの後部シートに座っているというのに、先生の背を倒したシートの後ろで、私は身動きも取れずに、息を殺して小さく固まっていました。

高速道路に入ると、運転手はスピードをあげたのでしょうか、奥様は時々身を乗り出して、スピードメーターを監視します。そして、飛ばしてることに気づくと

「ちょっと、あんた、スピード出し過ぎで危険やないの!」と運転手の頭をちょんちょんとこずくんです。そして、またしばらくすると今度は「冷房効きすぎやないの!えらい寒いわあ!もっと温度上げてちょうだい!」と、またこずく。

私などは、奥様のその行為の方が運転の妨げになりよっぽど危険なんじゃないかと思うのですけれども、奥様はおかまいなしでした。運転手さんはというと、いつものことなのか、はいはいって感じの対応で上手にかわしてました。

そして、しばらくすると、夜道の高速、ふと隣を走行するダンプカーの高い助手席から見下ろす視線を感じるようになりました。

同じ方向に向かって走っているので、抜きつ抜かれつ同じダンプがそばに寄ってくるので、どうしても気になる私。

あちら側では、きっと、こんな高級車にどんな人が乗っているのかと、退屈しのぎにのぞいていたのだと思います。それがVIP席に、原田治イラストの真っ黄色のエプロン姿の女が鎮座しているのだから、そばに寄ってくる度に、二度見、三度見。しまいには笑いながら手を振ってくる始末。先生は前で熟睡されているので、まさか先生に手を振ってるわけはないだろうから、後部座席に座る謎のエプロン女性の私にだろうな(汗)

やがて、車内は政府要人とその奥様と、どうでも良いエプロンの要人を乗せ、ようやくマンションに着いたのでした。そして、奥様付きお手伝いさんの私は身にあまるVIP席から解放されたのでした。やれやれ

 

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それにしても、先生はもともと大企業の社長さんだから、こんな立派なおクルマに乗り立派なお住まいに住んでいらっしゃるわけなのですが、ちっともぶらないし、怒らないし、身近で普段の先生を拝見しながら、大物というのはこういう人物なのだなと思ったのでした。

一方、奥様も「主人がね、『もしかしたら今度ばかりは会社が危なくなるかもしれないよ』と言ったことがあったのね、その時『あなたが無一文から起こした会社なんですから、また無一文になろうと、私は大丈夫です』って言ったのよ」と、私にお話されたので、奥様のケチケチ生活も根底に先生との強い絆の上にあるのかもしれないと思ったのでした。