今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

母がどうしてもやりたかったこと

母が寝たきりになって、美容院にも行けなくなり、それまで染めていた髪がだんだんと伸びて根元からほとんどが白髪になったとき、ある日私は母の髪の毛の白髪部分を残して染め残しの汚い毛先部分をカットしてあげました。すると母はもともと若白髪でしたので、本来の髪の毛はすっかり真白になり、まるで外人のように綺麗な美しい銀髪ヘアーになりました。そんな母の髪の毛を見て周囲は皆きれいになりましたねとほめていたのですが、当の本人だけは、その真白な髪の毛を認めようとしませんでした。

その日以来ずっと母は鏡を見るたびに小さな悲鳴をあげては、白髪ヘアーを嘆き悲しむようになりました。けれども、日にちが経てば、さすがにそれも見慣れるだろうと私たち家族は気楽に考えていました。

しかし、認知症が進行してきた母にとって、今がいつなのかがわからなくなっていたため、まだ仕事をしていると錯覚することも多かったので、鏡を見ては「こんな髪じゃひとに会えない!美容院に行って髪を染めなくちゃ!」と、毎日何度も繰り返して言うようになりました。

とはいえ、一度は介護認定4にまでなってしまった母、歩けるようになったとはいえ、家の中だけで玄関から外へは出なかったし、また部屋では常に横たわってお布団の中に入っている生活でしたので、美容院に連れて行き髪を染めるなんてことは体力的にも無理だと思っていました。また、毎日着たきり寝たきりの91歳の母が髪の毛を黒く染めるなんて無駄だと思っていました。折しもグレイヘアーなるものが流行り、これはいい風潮だとばかりに、私はグレイヘアーの素敵な芸能人の写真を部屋やトイレに貼って、母に髪の毛は染めない時代になったことを伝えようとしました。

しかし、そんな外部からの情報は、髪の毛を染めたい一心の母の脳裏には焼きつきませんでした。

 

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とにかく、母は、どうしても髪の毛を黒く染めたかったんですね。兄嫁が目を離したすきにお金も持たず近所の美容院にシルバカー押しながら行ってしまいました‼︎兄嫁からLINEが来て「すっかり綺麗になった!」と写真が送られて来た時は驚いたのなんのってまじ?ってなりました(笑)

カットして染め終わるまで2時間もかかったので、美容院から連絡が入り兄嫁が迎えに行き家に連れ戻った母は、疲れすぎてずっとそのまま眠り続けてしまったそうです。そりゃそうですよねえ。普段、動かず椅子に長らく座った状態でいることなんてありませんから。しかし、91歳の母の生命力を感じました。

母にとって、髪の毛が黒い状態でいることが、心の安定だったようです。母の身近にいる家族はそのことになかなか気づけなくて型にはまった考えでいたのを、ちょっと離れた場所にいる夫の方が、母の生き方を理解し、鷹揚にかまえて見守れる優しさを持っていたのには、ちょっと感動しました。