今日もぽれぽれ

「ポレポレ」とはスワヒリ語でのんびり、ゆっくりという意味です♡

ポタポタ節約大作戦

大物政治家さんは、マンションの4世帯分あるワンフロアーを全部所有していました。

エレベーターを降りると片側の二つのドアは大切なお客様のお部屋と新聞記者のための部屋、もう一方の側のドアは、ご家族のプライベート住居になっていました。

ワンフロアに他の住人がいなかったためか、奥様は不用心にもどこのドアも開け放していました。プライベート住居に入るとすぐ廊下で、左手が大きなリビングになっており、そこに先生のデスクと椅子、中央には先生が新聞を広げて読むための大きな和テーブルがあり、さらに奥には和室がありました。またそのリビングのキッチン側の壁際には事務デスクがあり、そこには電話機と毎日届く郵便物が置かれていて、奥様はそこにエプロン姿でちょこんと座り郵便物をチェックしていました。

自分が出られない時にはこの電話に出てねと言われたのですが、当時携帯電話のない時代でしたので、大事な電話はそこにかかって来るため、とても緊張しました。そのデスクの端には、もうひとつ電話があり、その電話は警察に直通する電話でした。定期点検でベルがなることはありましたが、ほとんど使用することのない電話機でした。

 

先生は大変几帳面な方で、デスクは常に整然と片付けていらっしゃいました。毎朝5時半に起きると同時に、先生は和テーブルに新聞を広げ、大事な記事をみつけると、すぐに記事の四角に赤鉛筆でマーキングしていました。そして、そのために使う優に30本はある赤鉛筆の先を長く鋭く尖らせることが、まず最初に私が言い渡された仕事だったように思います。先生は、新聞全紙を2部ずつとっており、マーキングした記事の裏側にも大事な記事がある場合は、もう一紙の新聞でその記事をマーキングしていました。そして、マーキングした新聞はA4くらいの大きさにピシっと揃えてたたみ、それを仕事の合間の時間にせっせと読まれていたようで、毎朝束ねた新聞を持ってお出かけになりました。思えば、先生は家でも常に仕事モードで新聞や資料に目を通していらっしゃる寡黙な方で、またニュース以外のテレビを見たり、自宅でだらしない格好でくつろいだりするするようなことは一切ありませんでした。 

当時、その大物政治家さんは時のひとだったので、朝と晩に新聞記者が毎日やって来ました。私は毎日9時半に出勤したのですが、その頃には記者さん達は引き上げたあとで、キッチンの流しには山のような湯のみやコーヒー茶碗が下げられていました。当時は25社くらいの記者が毎日来ていたようでした。奥様はそんな新聞記者さん達に、朝はコーヒーと果物を、夜は日本茶または紅茶とお茶菓子さらに果物などをお出ししていたので、そのお茶の準備のためにお湯をわかして用意するのも後片付けも大変でした。デミタスサイズとはいえ、コーヒーカップ&ソーサーで2×25で50個、それに果物皿で25個、フォークが25個、たいしたことないように思うけれど、毎日となるとやはり大変ですよね。

そして、その奥様がどこで得た知識なのかわかりませんが、パッキングが壊れた蛇口から漏れる水道水のしずくは水道代がかからないんだとおっしゃり、当時お醤油が入っていたペットボトルをよく洗って、キッチンのポタポタ水滴の落ちる蛇口の真下に起き、信じられない時間をかけて水を溜め、いっぱいになると今度はそれをよく陽の当たる窓辺の縁にズラーっと並べて日中の太陽で少し温くなったらそれをやかんに入れ火にかければすぐに沸騰するので、水道代もガス代も節約できると大喜びで実践していたのでした。私は何か他の用をしながらも、常にポタポタ水滴の落ちる蛇口真下のペットボトルを気にしていなければならず、水があふれそうになったら、さっと次の空のペットボトルに置き換えるのでした。そういう節約を無邪気に楽しみながらやるのが大好きな奥様で、その先もいろんな節約大作戦をやらかして、私を驚かせたり恐怖に陥れるのでした。

 

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↑イラストの訂正 電気代× ガス代◯ です